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チェンジ The デート12

Autor: 相沢蒼依
last update Fecha de publicación: 2026-02-17 11:21:00

「当然このまま、馬鹿にされた状態じゃいられねぇしな。だったら古臭いと言われた、インプのケツでも眺めてもらおうか。雅輝の運転なら、間違いなく瞬殺だろうけど」

「陽さん――」

「助手席から、対向車についてナビってやる。だけど素人だから、正確さについてはどうしても欠けてしまうけど、それでもいいか?」

バケットシートに送り込んだ宮本に提案したら、異常と思えるくらいの満面の笑みを浮かべた。にんまりした自分の顔を見て、ゾッとしたのは内緒だ。

「いいに決まってるじゃないですか! 陽さんが俺の隣でそんなことをしてくれるだけで嬉しすぎて、張り切りすぎちゃうかもしれません」

「ぶち抜いたあとまで、嬉しさはとっておけ。とりあえず、あの馬鹿野郎どもをとっとと追いかけるぞ!」

運転席のドアを閉めたタイミングで、インプのエンジンがスタートした。それに急かされるように助手席に乗り込み、シートベルトを締める。

「出発しても大丈夫ですか?」

「ああ、さぁ行こう。アイツらを徹底的に、絶望させるために――」

追い抜く気満々の宮本の運転と助手席にいる橋本のナビで、ランエボとのバトルが勝手に開始されたのだった。

※この
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  • BL小説短編集   朝の鍵盤に触れるように

    *** 目を覚ますと、すぐ隣に陽の寝顔があった。 まだ眠っている。寝癖もついたまま少しだけ唇を開けて、穏やかな寝息を立てていた。 昨夜は……甘かった。柔らかくて、熱くて、でも決して急かされることはなくて。彼の中に自分が包まれていくたび、ひとつずつ“確かさ”が積み重なっていく。 シーツの中に伸ばした手が、まだあたたかい。指先に触れる肌の感触が、余韻のように残っている。「……陽」 呼びかける声は、喉の奥で震えた。ふたりで暮らしを始めて、何度目の朝だろう。昨夜とは違う静けさの中で、僕の胸はゆっくりと満たされていく。 寝返りを打つように、陽が少しだけ体をこちらに向けた。頬にかかる髪をそっと指で払ってやる。 ――ピアノの鍵盤に触れるときと、同じくらい慎重に。壊さないように、大切に。「……もう恋人ってだけじゃ足りないくらい、君が近いな」 そう思ったとき、陽のまぶたがゆっくりと開いた。「……ん、おはようございます。司……」 寝起きの声は、かすれていて甘い。たまらず、僕は彼の額にそっと口づけた。そうしてから、もう一度瞳をのぞきこむ。「昨夜のこと、夢じゃない?」 「……夢じゃないですよ。ちゃんと……ここにいますから」 陽は微笑むと僕の首に手をまわし、そのまま唇を重ねた。朝のキスは、夜よりもゆっくりで、でも芯からあたたかい。「……起きるの、もったいないですね」 「ほんとだ。もう一度、君に触れたいって思ってる」 「お返しですか? じゃあ……やさしくしてくださいね、司」 陽の瞳が、ほんの少しだけ潤んで、でもどこか挑むように笑っていた。その顔が、愛しくてたまらなかった。 ゆっくりと彼の体を抱き寄せる。シーツが滑る音と重なる鼓動。言葉よりも先に、肌が熱を求めていた。「やっぱり、朝の陽は特別だな。いちばん綺麗だ」 「そういうの、ズルいですよ」 抗議の言葉とともに、くすぐったそうに笑う声。たったそれだけで、また心がほどけてしまう。 朝の鍵盤に触れるように優しく、慎重に――けれど確かに、僕たちはふたりでまたひとつ“愛”を奏でていた。*** 食卓に並ぶトーストとコーヒー。新しい同居生活のはじまりに、ぎこちない笑いと、「砂糖どこだっけ?」なんてやりとりもあったけど……。 この朝が、これからのすべてになる。 音楽よりも確かで、生活よりもあたたかい、

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    ***「陽、こっちの段ボールって……なにが入っているんだい?」 「えっと、たぶん楽譜とかノートとか……って、あ、それ崩れる! あぶなっ……!」 引っ越し初日。俺の荷物は思ったより多くて、九条さん――じゃなくて、“司”の部屋(今日からふたりの家)には段ボールが山積み状態だった。「……ふふ。思ってた以上に“生活感”が溢れてるね」 「ピアノ関連だけで、箱が三つありますからね……でも、これでようやく“恋人同士の同居”って感じがします」 ソファに並んでどっと座り込むと、司がペットボトルを渡してくれる。汗をかいた首元から冷たい風が入って、少しだけほっとした。「……ねえ陽。こうして一緒にいるの、すごく自然だなって思う」 「俺もです。まるで最初からこうだったみたい」 自然と笑い合う。疲れてるはずなのに司が隣にいると、それだけで体の力が抜けていく。これが「帰る場所」なんだって、やっと思えた。*** 夜。段ボールの半分だけ片づけたところで、ふたりして早めにベッドに潜り込んだ。「……ねえ、陽。今日は疲れてる?」 「そうですね。でも司とこうして一緒に寝られるのは、やっぱり嬉しいです」 隣から伸びてきた腕が、俺の腰をそっと抱き寄せた。甘えるような抱きしめ方。まだ慣れない“ふたりの寝床”に、心の奥がじんわりとあたたまる。「ねぇ、ちょっとだけ……触れても、いい?」 「……ちょっとだけですよ?」 その“ちょっと”が嘘になるのは、お互いわかってた。 唇が触れて、息が混ざって、司の手がシャツの裾をそっと撫でる。優しくて、あたたかくて――愛おしさが指先から零れてくる。「……陽の匂い、好きだな。落ち着く」 「司、ちょっと甘えすぎです」 「君にしか、甘えられないから」 そんなことを言われたら、胸の奥がとろけてしまう。 服の上から撫でられる背中。そっと噛まれた耳たぶ。唇の隙間から漏れる吐息が、寝室の空気を甘く変えていく。「もっと、陽に触れていたい」 「……だったら、ちゃんと“恋人らしい”ことしてくれなきゃ」 「どういうことだろうか?」「俺にも、気持ちよくさせる“お返し”、してもらいますから」 司が一瞬だけ、驚いた顔をする。けれど次の瞬間には、艶のある笑みに変わっていた。「じゃあ、覚悟してて」 ベッドの中で重なる体。触れて、感じて、名前を呼び合って―

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    *** 呼吸が落ち着いてきた頃、僕は陽の額に静かに唇を押しあてた。濡れた前髪を指先でかきあげながら、その頬に手を添える。 彼は腕の中で眠るでもなく、目を伏せたまま微かに震えていた。「……陽、大丈夫?」 優しく訊ねると、陽はかすかに首を縦に振った。けれど返事はなかった。 肌の熱がまだ抜けきっていない。汗ばんだ背中を、そっと毛布で覆う。僕の指先をその手で掴んだまま、陽がぽつりと呟く。「……なんか、ずるいですよ、司は」 「どこが?」 「……好きにならずにいられるわけないじゃないですか、こんなの」 その言葉に、思わず喉の奥で息を詰めた。愛おしすぎて、言葉が見つからない。 目を伏せたまま、陽が続きを呟く。「今日の音も、キスも……その手も。全部、ちゃんと届いてきて……」 ぽろりと目尻から涙が零れ落ちる。それは哀しみではなかった。安心と幸福が飽和して、溢れ出た涙。「ごめん。泣かせたかったわけじゃないんだ」 「違います……泣いてるんじゃなくて……しあわせなんです。たぶん、いままでで一番」(ああ、僕はもう、この人の涙の意味ひとつに、一生を懸けてもいいと思ってしまった――) 僕の胸の奥で、なにかが静かにほどけていく。彼が“震え”ではなく“想い”をさらけ出してくれることが、たまらなく嬉しかった。 ぎゅっと抱きしめると、陽は素直に身を預ける。柔らかな髪に口づけを落とした。「陽……僕がこんなふうになるなんて、自分でも驚いてる。でも、もう戻れない。君なしじゃ、生きていけない」 「……俺もです。司の音がない毎日なんて、考えたくもない」 指先を絡める。汗と涙の混じったあたたかな体温が、静かに繋がる。 その夜、僕たちは何度も口づけを交わし、互いの肌を確かめ合った。けれどもう、“触れる”という行為は目的じゃない。ただ、こうして近くにいることが――生きている音そのものだった。*** 窓の外では、夜明けが始まりかけていた。淡い空の色を眺めながら、ベッドに横たわる陽の背を、僕はそっと撫でる。「ねぇ陽」 「……はい」 「これが夢だったら、どうしよう。目が覚めて、君が隣にいなかったらって……少しだけ怖い」 「だったら、次に目を覚ましたときも、俺が“おはよう”って言いますよ。何度でも、司の隣で」 僕はなにも言えなかった。言葉よりも、彼の存在が“真実”すぎて

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    *** 陽の体の熱が、僕の腕の中で徐々に高まっていく。彼の吐息は、もうはっきりと甘さを含んでいて、それがたまらなく愛しい。 ソファに横たえた彼のシャツを、ゆっくりと指先で外す。ボタンがひとつ、またひとつと外れていくたび、隠されていた素肌が露わになる。俺の指がなぞるたびに、彼の肌はわずかに震えた。「……陽、ここ、弱いんだね」「っ、司……ほんとに、いじわる……」 恥じらうように俺の胸元に顔を埋める仕草も、声の震えも、すべてが音楽のようだった。調律師の彼が奏でる音ではなく、僕だけが引き出せる“音”。 その感情に突き動かされるように、唇を鎖骨に落とした。吸い付くように、噛むように、跡をつけていく。誰にも見せられない場所に、僕の証を残したくて。「こんな顔、誰にも見せないで。……僕だけの陽でいてほしい」 喉元に口づけながら、耳元で囁く。陽の腕が、僕の背中にそっとまわされる。 彼の体温が高い。熱を持って、俺を欲してくれていることが、確かな鼓動となって伝わってくる。 ふたりの足が自然と絡まり、肌と肌が重なり合う。まだ“最後”までは踏み込まない――けれど、もう気持ちはそれに近いところにいる。 腰のあたりに触れれば、彼の呼吸がはっきりと跳ねる。目を合わせれば、もう逃げられない場所まで来ていることがわかる。「……ねぇ陽。今、君の音が、僕の中でこんなに響いてる。苦しいくらいに、君が愛おしい」 濡れた視線を落としながら、額を重ねる。唇をまたひとつ重ねて、深く長くキスをした。唾液が混じり合い、舌と舌が探るように触れ合う。 ――このまま彼に溺れてしまいたい。音も名前も、忘れてしまうくらいに。「司……っ、もう、ちょっと……んっ」 陽の吐息が僕の耳元で揺れて、それだけで旋律のようだった。かすかに濡れた声が、僕の中の“調律”を狂わせていく。「だめ。今夜は……まだ終わらせない。陽の全部をこの耳で、ちゃんと聴きたいんだ」 指先で彼の背中をなぞりながら、また唇を落とす。次第に彼の動きも溶けていって、まるで僕の演奏に応えるように、緩やかに体を開いていく。 ベッドでもステージでもない場所で、こんなにも深く誰かと“音を重ねる”とは思わなかった。 僕は確かに今――芹沢陽という旋律に溺れていた。

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