Masuk狼狽える宮本の額に目がけて、橋本は笑いながらちゅっとキスを落とした。「陽さん、無理してない?」「くどいぞお前。俺がいいって言ってるんだから、思いっきりヤりやがれ!」 顔のすぐ傍で喚いたせいか、橋本の怒鳴り声が鼓膜まで響いた。「ひ~っ、これから手を出させていただきます!」 しなくてもいい宣言をしつつ、橋本が着ているシャツのボタンを外していった。「雅輝はやっぱりドМだよな」 かけられた声に、ボタンを外している手が止まった。 これからソファでおこなわれる行為を考えただけで、嬉しさのあまりに手が震えるせいで、外すだけでも一苦労していたところだった。「そのことについては否定しませんけど、俺ってば何か醸してます?」「俺に怒られてビビった声を出したくせに、顔は思いっきり笑ってるっていう、おかしなことになってるぞ」「それはだって、ねえ。これから普段しないようなコトをいたすんですし、陽さんがどれだけ感じてくれるかを考えたら、ニヤニヤが止まりません」 何とかボタンを外し終えて、橋本の素肌に触れる。「おいおい。張り切りすぎるあまりに、痛いコトだけはすんなよ。インプと違って、俺はヤワなんだからな」 呆れた声に首を何度も縦に振りながら、顔を寄せた。「大好きな陽さんに、傷つけることはしません。誓います」「そろそろ大好きって言葉よりも、愛してるって言って欲しいんだけどさ」 唇を塞ぎかけた宮本の動きを止める、橋本のセリフ。寄せていた顔を遠のかせて、目の前にある恋人の顔をじっと見つめた。「そういえば俺、大好きばっかり言ってた」「雅輝らしくていいんだけど、やっぱり愛してるって言われたい」 宮本の首に両腕をかけながら強請られた言葉は、いつも口走っている『大好き』と違って、宮本を緊張させるものだった。 自分の想う気持ちの重たさを示す言葉になるんじゃないかと、安易に口にできなくて、ごくたまに告げるだけにしていたものなれど――。「愛してます、陽さん」 橋本に想いを伝えるために、これからは積極的に使おうと考えた。「俺も雅輝を愛してる」 首に絡んだ腕が宮本を引き寄せて、橋本から唇を重ねた。 限られた時間を、濃密に過ごすことができたふたり。たまに遠回りしながらも、笑い合いながら楽しい休日を過ごしたのだった。愛でたし 愛でたし
殴られた部分を両手で押さえながら、呻き声をあげる宮本を目の当たりにして、橋本は大きなため息をついた。「陽さんひどいよ。今ので俺のヤル気が、全部吹き飛んだ!」「軽くグーパンしただけだろ。それに空気を読めない、雅輝が悪い」「陽さんのパンチは表面が痛いんじゃなくて、殴られたあとに中側に衝撃波がくるんだってば。軽いものでも、俺の目玉が飛び出ると思ったんだから」「今の言葉で、俺のヤル気が1.5倍増えた」 ぼやく宮本の背中を、橋本は苦笑いしながら宥めるように擦った。「何でヤル気が漲るんですか。俺は克明に文句を言ったというのに」 相当痛かったのか、こめかみを擦る宮本は面白くないことを示すべく、つんと唇を尖らせた。「褒め言葉にしか聞こえなかったぞ」 そんな宮本の態度も何のその。橋本は苦笑いを止めて、思いっきり微笑み倒した。「さっきのどこが、褒め言葉に聞こえるのやら。俺にはさっぱり分からない」「だよな、さっきからすれ違ってばかりいるよな」「これって陽さんの意図を悟れない、俺が悪いんでしょうか……」 尖らせた唇をもとに戻して、恐るおそる訊ねる宮本に、橋本は気難しい顔を決めこんだ。「すぐに悟られたら、それはそれで面白くない」「え~っ、それってどっちに転んでも、俺が陽さんに攻撃されちゃうじゃないですか」「常に緊張感があっていいだろ。それに――」 言いかけたセリフを意味深に止めた橋本を不思議に思い、宮本は真剣な表情で顔を寄せる。「それに?」「他愛ないやり取りだろうが、好きなヤツとするのは、何をやっても楽しいってことさ」「陽さん……」「結局は強請られたことのほとんどを、文句を言いながらも許してやってるだろ。心の広い俺に感謝しろよ」 宥めるために撫でていた宮本の背中を、思いっきりバシンと叩いた。「……いいの?」「今更それを聞くのか。まったく」
橋本の顔の横に両腕を突き立てながら前屈みになりつつ、すっかり形が変わってしまった大きくなったモノを、容赦なくぐりぐり擦りつけた。「くぅっ……」 ほんの数時間前にイチャイチャしたばかりなのに、擦りつけた部分は宮本だけじゃなく橋本も熱く熱を孕んでいた。「陽さん、感じ足りなかった?」 刺激をするようにゆっくりと腰を上下に動かして、橋本の顔色を窺った。「雅輝だって、ンンっ、あんなにシたのにっ、俺を求めるなんておかしいだろ」 背もたれにかけた片足が時折ビクッと跳ねることで、橋本が感じているのが分かった。「触れるだけで、簡単にスイッチが入っちゃうんです。さっき触った陽さんの胸の高鳴りが、てのひらに伝わったせいかな」(俺のとった行動で、あんなふうにドキドキする陽さんを見せられたら、歯止めが効かないに決まってる――) 突き立てた両腕を折りたたみ、橋本に顔を近づけて噛みつくようなキスをした。「やぁっ、あっ…んあっ…ぁっ…」 舌をじゅぷじゅぷ出し入れさせながら、下半身の動きも連動させる。橋本がこのまま流されてくれますようにと、時折焦らしつつ感じさせた。「雅輝ぃっ…刺激強すぎ、勘弁してく、れ」「陽さんがここでしてもいいって言ってくれたら、刺激を与えるのをやめますよ」「ひでぇ交渉するんじゃねぇよ。クソガキ……」 口ではそんなことを言ってるのに、まったく抵抗を見せない橋本を不思議に思い、宮本は目を瞬かせながら首を傾げた。「何て顔してるんだ。俺はおかしなことを言ってねぇだろ」「そうですけど……」「まったく! 察しろよ、空気を読め!!」「むぅ。空気を読む?」 言いながら橋本の首筋に顔を近づけて、鼻をすんすん鳴らした。その瞬間に、こめかみ辺りに橋本のパンチが炸裂する。容赦のないその攻撃のせいで、両目から星が飛び出た。
「や…め…っんん、ここじゃだっ、駄目だ。狭ぃ」「きっと大丈夫ですよ。上半身は俺が押さえ込めばいいだけですし、陽さんの片足を背もたれに引っかければ、狭さも上手いことカバーできますって」 笑いながら告げると、それまで大人しかった橋本が腕の中で暴れはじめる。「やらしすぎる。そんな恰好させられる、俺の身にもなってみろ。恥ずかしいに決まってるだろ。絶対に嫌だ!」 視線を鋭くしているのに頬を少しだけ染めるという、表現しがたい可愛い顔で抵抗されるだけで、宮本の闘志に火がついた。力任せに橋本の躰をソファの上に押し倒して、素早く跨る。「ちょっ、いつも動きが緩慢なのに、こういうときに限ってお前は!」「繋がってるところを眺めながら、出したり挿れたりしたら、さぞかし気持ちいいんだろうな」「あっ悪趣味にもほどがある!」 眉根を寄せて不快感を表す橋本を、ニヤニヤしながら見下ろした。「見られながらするの結構好きなくせに、そんなこと言っちゃって。俺のがもげる勢いでギュンギュン中を締めつけて、いつも感じさせてくれますよ」(今の俺ってば、ものすごく意地悪な顔をしてるんだろうな。そんな最低な俺に見つめられる陽さんは怒ってるのに、瞳を潤ませつつ顔が真っ赤だから、全然怖くない。今すぐに感じさせて喘がせたいな――)「それは雅輝が変な目で俺を見るから、すげぇ恥ずかしいだけであって、感じてるわけじゃねぇよ!」 ギャーギャー喚く怒鳴り声を完全に無視して、宮本は跨っていた自身の躰を下にズラし、橋本の片足を手に取る。「よいしょ。陽さんの長い足を、背もたれにかけてっと」「やめろっ、足が開きすぎだ。というか俺の話を聞け!」「どんなふうになるか、試しにやってみただけですよ」
「陽さんに比べて俺は、これまで付き合ってきた人数が圧倒的に少ないだろうから、経験が浅い分だけストレートな物言いしかできなくて、何ていうかこう……。さっきの陽さんみたいに、仕草だけでドキドキさせることができたらなぁって思ったんです」「雅輝の経験が浅いからこそ、こっちの読みを外すような行動をされるせいで、十分にドキドキさせられてるっちゅーの」「ねぇ、今もドキドキしてる?」 吐息と共に囁いた宮本の声に、橋本が躰をビクつかせた。「おいっ! わざと耳元で喋ったろ。弱いこと知ってるからって、卑怯だぞ」「え~っ、抱き合っていたらお互いちょうど、耳元辺りに顔がくるじゃないですか。わざとじゃないですよ」「『ねえ』の部分、いつも以上に息を吐きかけていただろ」「陽さんってば、俺の質問に答えてくれないんですね。ドキドキしてるかどうか、直接触れて確かめちゃいますよ?」 橋本を抱きしめていた片手を使って、長袖のシャツの裾から手を忍ばせる。「お前そういうのは、もうしないはずじゃ……」 腰から徐々に肌をなぞって左胸に到着させ、人差し指で乳首を弾いてやった。「んんっ…っぁ!」「ドキドキと一緒に、熱い想いがじわじわ伝わってきます。良かった」「よくねぇ、よっ。雅輝の手のせいで、ドキドキがっとまら、ないっ」 宮本の躰にしっかり抱きついた橋本は、雄の印を腰骨に押しつけてきた。「むぅ、やっぱり3回じゃ足りなかったんだね。このままここでしちゃう?」 反対の手で橋本の敏感な割れ目を、ゆっくりとなぞった。
「陽さん……?」「雅輝のその考え、つい最近まで俺が思っていたことなんだ」「えっ!?」 ぐりぐり攻撃を止めて優しく頬を包み込んだ橋本の手は、愛おしそうに宮本の顔を引き寄せて、触れるだけのキスをした。隣で座ったままの自分に橋本は顔を真横に向けてキスしているため、いつもと違う感じがした。(陽さんの中に舌を入れて責めてみたいけど、今すべきじゃないんだろうな) 触れ続けるキスを受けていたら、角度を変えてもう一度触れてから名残惜しげに離れる。「雅輝に抱かれると、江藤ちんとはどんなふうだったのかを考えちまって……」「そんなの――」「そんなの、考える必要のないことなのにな。頭で分かってたんだけど、どうしてもチラチラ過っちまって。雅輝をもっと感じさせることを、いろいろしていたんじゃないかなんて」 笑ってるのにどこか泣き出しそうな笑みを見て、迷わず橋本の腰を抱き寄せるなり、ぎゅっと強く抱きしめた。「陽さん、ごめんね。ヤってる最中に過去を匂わせる何かを、俺がしていたせいで悩ませてしまって」「そのセリフ、まんまお返しする。だけどさ雅輝」 躰に橋本の両腕が回され、同じように抱きしめられた。「なんでしょうか?」「お互い、いろんな過去があったからこそ、こうして巡り合えたんじゃないかと思うんだ」 ベルベットのような柔らかい声を耳元で聞いたからか、宮本の中にくすぶっていたモヤモヤした感情が、蒸発するようになくなっていった。「そうか、陽さんと出逢うための過去」「その考えに辿りついたら、江藤ちんに嫉妬している自分が恥ずかしくなってさ。終わったことなんだから、しょうがねぇだろ?」(やっぱり陽さんはすごい。俺よりも先に壁にぶち当たっていたのに、自分で解決できちゃうなんて――)







